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その6 [第2章 ふたり暮らし]

 遅ればせながら、ねずとぶち子の『猫となり』を、ここでちょっと紹介しておこう。

 ねずは、キジ猫。濃淡の褐色に黒の縞がまざって、
ほんとうにキジの羽のような色合いの毛並みがつやつやと光って美しい。
毛足は短いが、なめらかでビロードのような手ざわり。
頭から胴体、尻っぽの先まで、ほぼ全身がキジ縞柄だが、胸からお腹はまっ白。
四つ足も、先っぽに白いソックスをはいているみたい。
尻っぽはわずか五センチほどしかなく、それがふさふさとしたキジ縞の毛でまん丸く覆われていて、
まるでお尻にポンポリがくっついているようだ。
丸顔にピンと立った耳、くるくるとよく動くオリーブ色の眼。
そして、なにより特徴的なのは、まるで白の絵の具をひと筆すっと走らせたように、
鼻先を真一文字に横切る一本の白線だ。

ちっちゃくて、敏捷で、顔のまんなかに白線が引かれたポンポリ尻っぽの子猫。
それが、『ねず』という猫だ。

 ぶち子は、いかにも日本猫らしい三毛である。
全身が、茶と黒と白の大ざっぱなまだら模様に染められ、
ご先祖のどこかに長毛種でもいたのだろうか、やや長めの毛がふわふわとして可愛らしい。
尻っぽはすらりと長く、ポンポリ尻っぽのねずには、ちょっとうらやましい。
長い尻っぽをゆらゆらと優雅にくねらせ、するりと身体に巻きつける仕草は、
美猫に見える条件のひとつだ。
でも、ぶち子はぶち子で、ねずのポンポリが気になっている。
だって、そんなヘンちくりんな尻っぽの子、どこ探したっていない。

ぶち子の最大の特徴は、顔のなかほどにど〜んと大きく目立っている『黒いぶち』である。
正確には、黒いぶちは、鼻筋の中心線から左側、
左目のまわりに顔の半分をおおうぐらいの大きな半円形を描いている。
つまり、ぶち子は、顔の右半分が茶色くて、左半分がおおむね黒いのだ。
顔の右と左で、見た目の違う子・・・
ぶち子がとても気まぐれで、ついさっきベタベタしてきたかと思うと、
いまはもうプイとよそを向いて知らん顔するような二重人格(猫格?)的性格なのは、
きっと左右ふたつの顔をもっているせいだ、とねずは思っている。

 ぶち子は、五月の半ばに、まさにこのベランダで生まれた。
母親は、さくらママ。父親は、不明。
ま、ノラの世界では、父親の欄に名前がある方がめずらしい。
母親がはっきりしているだけ幸せというものだ。

 ともあれ、顔のまんなかに白線のあるポンポリ尻っぽのねずと、
左右ふたつの顔をもつ三毛のぶち子は、さくらママが引っ越していったあとも、
ベランダでくっつきながら暮らしていた。

 まるで、生まれついての姉妹のように。

   ~その7に、つづく~


コメント(4) 
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コメント 4

yonta*

ねずちゃんのくつした履いた足、かわいいですよね。
ぶっちゃんのような、くっきり三毛な子は、
最近あまり見なくなった気がする・・
そうか、完全な和、な雰囲気じゃないのは、
ちょっと長毛だからだったんですね。
by yonta* (2012-12-22 18:22) 

セーラ

いつも、息を飲んで、この連載に伺います、
もちろん公園の様子も。
猫たちと、その子たちと触れ合う心情に心をわしづかみにされながら。

ねずチャン、ぶち子ちゃん、ふたり暮らしが始まって…
姉妹以上の姉妹☆ これからがさらに楽しみ!♪
by セーラ (2012-12-23 03:42) 

morichan

さくらママは、ねずちゃんが来てくれたのは運命だと思ったのでしょうかね。
いくら「子離し」の儀式とはいえ、ワガママぶち子ちゃんを置いていくのは忍びない。
そんな中の、気が合うねずちゃんの登場ですもんね。
いつも寄り添う2匹と見守る1人の物語は、いつ読んでもあったかいです。
by morichan (2012-12-23 17:07) 

ミケシマ

すっかり仲良しになったね♪
ぶち子さんの性格は、三毛猫っぽい(^m^)
とにかく仲良くなって、さくらママも安心ね。
これでもうふたりとも 寂しくないね。
by ミケシマ (2020-05-18 17:35) 

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