その61 [第12章 命がきえる]
ギャー!バサバサバサ!グァッ!
あたりをつんざく甲高い叫び声に、ねずはハッと目を覚ました。
見上げると、頭上で二羽のカラスがもつれあって飛んでいる。
獲物をとりあって格闘しているのだ。殺気だった気配に、墓地に集まったほかのカラスたちも反応し、
墓地全体が騒然とした空気に包まれていた。
あたりはもう日が陰ってきていて、そろそろ夕刻である。
やばい、眠っちゃったんだ・・・とねずは思った。
どのぐらい眠っていたのだろうか?(お昼からずーっとですけど)
もうお墓に人影はなく、カァーカァーと騒々しいカラスばかりがやたらと目立つ。
いつも、こんなにカラスがいたっけ?
ねずが不思議に思うほど、その日は墓地にカラスが集まっていた。
・・・それって、なぜだかわかります?
カラスどもは、人間が置いていったお墓のお供え物を狙っているのだ。
もちろん花になど興味はない。お饅頭やお干菓子など、どうぞとばかりに供された食べものに誘われて、
目ざとい近所のカラスたちが、人間たちがいなくなるやいなや一斉にやってきていた。
それでもお菓子のお供えなんて、それほど多くあるものじゃない。
集まったカラスどもの需要に対して、絶対的に供給量が不足しているのだ。
だから、限られた餌を奪いあって、小競り合いがいくつも起きた。
たいていは先手必勝で、先に餌を取ったほうが勝ち。負けた方はいさぎよく去ればいいのだが、
腹ぺこのままじゃ帰るわけにもいかないとばかりに鵜の目鷹の目で墓地を見まわし、
どこかに食べられそうなものが残っていないか、いついつまでも探している。
そんな光景をねずがぼんやりと眺めていると、
一羽のカラスがひょいと飛び立ち、ヒメの隠れているお墓のとなりの墓石にふわりと止まった。
「!」 ねずはドキッとした。 まさか?
でも、そのカラスは、明らかにヒメの寝ぐらをのぞいている。
そして一声カァーといじわるそうな鳴き声を発したかと思うと、ぴょんとヒメの墓石に跳び移った。
ねずは弾かれたように屋根を飛び降りて、ダッシュでヒメのもとへと向かう。
墓石の裏から、シャーッ!というヒメの鋭い威嚇の声が聞こえた。
カァー! カラスはさらに頭を下げて、墓石の上からヒメたち親子をのぞきこんでいる。
爪をむきだしたヒメの右手がサッと伸びたが、カラスはひょいと頭を上げてやすやすと攻撃をかわし、
爪はむなしく空を切った。
やっと駆けつけたねずは、ヒメの背中側のブロックに跳びのって正面からカラスをにらみつけた。
背中の毛を逆立てて、せいいっぱいの怒りを表す。
ヴ~~~と低く唸り、いつでも臨戦態勢にあることをカラスに知らせた。
思わぬ援軍の出現にカラスは一歩あとずさり、しばらくのあいだ値踏みするように
二匹の怒れるメス猫たちを眺めていたが、やがて興味を失ったようにそっぽを向き、
バサバサと羽をはばたかせて飛んでいった。
ねずは、ピンと緊張させていた四肢の筋肉をほんのすこしだけゆるめる。 でもまだ両耳を
ぴたりと頭につけて、いつでも攻撃モードに戻れる体勢だ。くいしばった下あごがわずかにふるえる。
カラスは怖い。奴らはその固く鋭いくちばしで容赦なく攻撃してくるのだ。
もしカラスが本気になって、しかも二、三羽が連係プレーで襲ってきたら、
元気なオス猫でもやられてしまうだろう。
すこしずつ緊張をゆるめながら下を見ると、ヒメが子供たちを抱き寄せてふるえている。
まだ目も開かず、耳だって聞こえていないはずの子猫たちも、緊迫した母親の気配を感じているのか、
ちいさくちいさく丸まってヒメのお腹の下にもぐりこんでいた。
「ここはアブナイよ。すぐにでも移らなきゃ」
ねずは言ったが、ヒメが動けそうにないのはねずにもわかった。
ヒメはふるえる声で「今日はまだ無理・・・」と言った。 「そう、明日なら、たぶん・・・」
~その62に、つづく~
みなさま、あけましておめでとうございます♪
今年も、お話のつづきを読みにきてくださって、ありがとう。
めでたい年越しで、ちょっと悲しいシーンになってしまっていますが(^_^;
それでも、お正月に、いちばんツラい場面がこなくてよかったです。
さぁ、これからが、クライマックス!!! (°0°)
ねずちゃんの活躍と、ずっとお別れしたままのぶち子との行く末も
楽しみにしてくださいね♪ のらん筆
by のらん (2014-01-03 07:58)
こんにちは
今年もよろしく。
by かずあき (2014-01-03 12:07)
ぼへで挨拶してるのでこっちは無しで(笑)
ねずちゃん、頑張ったね~よく頑張ったね
カラスって怖いですよー
おっさん、先ほどベランダに出ようと戸を開けたら
すぐ裏の道で、カラス3羽が1羽を突いたり蹴ったりして
いじめていたそうですよ
暴力団なみやなって・・・
by こいちゃん (2014-01-03 14:52)