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その43 [第9章 仏っさまの教え]

後味の悪い夢のなごりをふりはらって、ねずは、ちいさく伸びをした。

 ・・・どのぐらい眠っていたんだろう?  (丸一日ですよ、ねずちゃん)

うろから鼻先を出して、あたりの様子をうかがってみると、外はまっ暗で、静まり返っている。

 夜明け前だ、きっと。 ・・・野生のカンが、ねずに告げる。
じゃあ、丸一日も眠ってしまっていたのだろうか?  (だから、そうなんだってば!)

ねずは、あたりに危険がなさそうなことを確認すると、うろからぴょんと飛び降りて、
凝り固まっていた身体をゆっくりと伸ばした。

 はるばる山のお寺にやって来た目的は、『まだらの仏っさま』に会うためだったよね。
・・・ねずは自問する。仏っさまに会って、心に住みついた『?』の答えをもらうんだったよね。
そして、ナンニモなくなったさくらママやパクのぬくもりを取り戻してもらうんだったよね。

でも、このお寺の一体どこに、仏っさまはいるのだろう?
暗闇のずっと奥にまでつづいている広い広いお寺を見やって、ねずは途方に暮れてしまった。

たしか黒覆面のゾロは、「仏っさまは、気の向かない相手だと、絶対に姿を表さない」って言ってた・・・
こんな遠いところまでやって来たのに、仏っさまに会うことはできないのかもしれない。
ねずは悲しい気持ちになった。これからどうすればいいんだろう・・・。

 ぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅぅ。

 それなりに情感あふれるシーンだったのに、なんだかその場に似つかわしくない音響が?
と思ったら、あれまあ、ねずの腹の虫の叫びである。

まぁ、命がけで百八の石段を昇りきって、そのあと丸一日も眠りこけて、ずっと飲まず食わずですもの。
腹の虫だって、場面をわきまえずに騒ぎ立てたくもなるだろうさ。
そして、空腹が猫にもたらす生体反応として、ねずの嗅覚が研ぎすまされた。

 あっちに向けてクンクンクン。こっちのほうもクンクンクン。 ん?
 なんだかこっちのほうから漂う匂いに、食欲センサーが反応しちゃうかも?

かすかな匂いに引き寄せられて、ねずはふらふらと歩きはじめた。
庭木のあいまをぬって、お寺の本堂へと近づいていくと、かすかだった匂いはだんだん濃くなって、
甘いような煙たいような香りが嗅ぎとれるようになった。そして、そんな不思議な香りにまじって、
いかにもキャットフード的な香ばしい匂いが、たしかにする。

 ん?ん?ん? 匂いは、本堂の裏手のほうから漂ってくるようだ。

いまやねずは、もう歩いてはいない! 足の痛みも忘れて、スタタタタタッと宙を飛ぶ勢い。
お寺の本堂は百年の歴史と風情を感じさせるなかなか立派な建造物なのだが、
そんなモノには目もくれず、ねずは超特急でその裏側へと回り込んだ。

 あああああ、さすがお寺! 仏さまのお慈悲に感謝を!

本堂の裏手には、ちいさなお堂がひっそりと建っていて、お堂の入口の賽銭箱の脇の地面には、
あきらかに猫用と思われるお皿が置いてあったのだ。もちろん、キャットフードの粒々入りで(!)

もはや食欲のかたまりとなってすっ飛んできたねずは、まっしぐらにお皿に突進し、
脇目もふらずキャットフードに食らいついた。

 「アタリナド、確認スル必要ナシ!」
 飢死寸前の場合は、用心深い本能だって、生命維持を優先する。

   ~その44に、つづく~


コメント(3) 
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コメント 3

かずあき

おはようございます。
次回の展開が。

大阪は(私の居住する寝屋川市は)、
現在(午前8時40分ごろ)、32度です。
晴れてますよ。
by かずあき (2013-08-31 08:49) 

こいちゃん

ねずちゃん、おはよう!
たっぷり眠れたね!そして、仏様はごはんも用意してくれていたのね
さて次回の展開はどうなるんでしょ。そして仏っさまの答えはまだ?
by こいちゃん (2013-08-31 09:34) 

ChatBleu

うぅ、まだまだハラハラドキドキです。
ねずちゃん、大丈夫かなー。
by ChatBleu (2013-08-31 10:37) 

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