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その50 [第10章 新しい出会い]

 王女さまの名前は『ヒメ』という。 ヒメは、ロシアンブルーの母猫から生まれたミックス
(ま、つまりは純血ではないということですが)で、父猫はアビシニアン×ペルシャの混血。
母方の祖母は美猫コンテストで入賞した経歴もある由緒正しい血統なのだそうだ。

ヒメは三匹兄妹の末っ子である。ミックスなので、子どもたちはみなそれぞれ違った容姿で
生まれてきたのだが、なかでもヒメはいちばん美しかった。 母方の血をより濃く受け継いだらしく、
ロシアンブルー特有のほっそりとスリムな体型に、つややかな銀鼠色の毛並み。
そして、くっきりと大きく、夏の青空のように澄みきったコバルトブルーの瞳。
幼い頃、ヒメは、ママに毛づくろいをしてもらいながら、いつも言われていたのだそうだ。

「おまえは、きっと幸せになれる子!その瞳で、人間たちを見つめなさい。
そうすれば、いつまでも大切にしてもらえるからね」

 ヒメは、生後三カ月で、新しい飼い主にもらわれて行くことになった。
ママの家とは、ずいぶんと遠く離れた街である。やさしそうな女の人にちいさなキャリーバッグに
入れられて、長い時間クルマに乗って、着いた先は広々としたお家。
そこには幼稚園に入ったばかりの女の子がいて、ヒメがやって来るのを首を長くして待っていた。

 ヒメと女の子は、すぐになかよしになった。
最初の二、三日こそママが恋しくてミィミィ泣いてばかりいたヒメも、猫好きの家族に可愛がられて
四日目にはもうママのことさえ忘れそうなほど幸せな気分になれた。

 そんな矢先、である。

女の子が突然、病気になった。・・・病名は『猫アレルギー』・・・原因は、当然、ヒメの毛である。

女の子にとっても、ヒメにとっても、それはとても悲しい病気だった。
家族は、急いでヒメを家から出すことにし、とりあえず『おばあちゃんの家』に連れていった。
でもおばあちゃんの家も、ヒメにとってはあくまで臨時の仮住まいである。
だってここも猫アレルギーの女の子が遊びに来る場所、猫の毛を散らばらせるわけにはいかないのだ。

おばあちゃんは、ご近所や知り合いに片っ端から電話をかけ、ようやくヒメの貰い手を見つけだした。
ヒメ、生後四カ月にして、もう三度目のお引っ越しである。

 ヒメの新しい飼い主は、おばあちゃんのダンス教室仲間の、さらにその知り合いの老婦人だ。
老婦人はかなりご高齢で、その家にはすでに五匹も猫がいた。

「あらー、どこにも行き場のない子猫なの?」老婦人は電話で言った。
「わたしも、もう歳ですからねぇ。子猫じゃ最期まで面倒をみてやれないと思うけど・・・
でも、行き場がないんじゃねぇ。とりあえず、連れていらっしゃいな」

 老婦人は、ひと目でヒメを気に入った。
そりゃ誰だって猫好きとあらば、あの瞳で見つめられれば好きになる。
ましてやヒメは可愛いさかりの子猫。先住の猫たちにもまずまず問題なく迎えられて、
ヒメの落ち着き先はようやく定まったかに思えた。
ところが、ヒメの災難はまだまだこれからが本番だったのである。

   ~その51に、つづく~


コメント(3) 
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コメント 3

ChatBleu

お嬢様にもかなり辛い歴史があるのですねー(;_;)
by ChatBleu (2013-10-19 11:27) 

こいちゃん

ヒメちゃん・・・なんというかわいそうな・・・
うちの長男も小学生で、猫アレルギーって言われたけど
出来るだけ部屋に入れないぐらいで飼ってますよ~~
「猫をどこかにあげるなど」と言うたドクターに
「いやじゃ!りんごはどこもやらん!」とはっきり言いました(笑)

by こいちゃん (2013-10-19 11:59) 

かずあき

こんにちは
御姫様、受難つづきなようですね。

我が家の件ですが
ニャンの場所のメインは6畳間の押入れ、
サブで4畳半の猫ちゃんベッド(グリーンいちご)、
4畳半の押入れ、ベッドルームの本箱。

ウルフは、メインがお気に入りと、ラック。
サンは、メインがタワーと脱衣室の洗濯機の上の籠です。

私の就寝時は、ニャンが、私の左枕元で、
ウルフが同じく、左足元です。
なぜか、サンだけは不明。
by かずあき (2013-10-19 12:06) 

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