その71 [第14章 そして、明日へ]
「でも、かわいいじゃない!
ほら、こっちの子なんて、まるっきりスコティッシュホールドみたいだもん。
また、どっかの家で産まれた子が捨てられちゃったんじゃないの?」と、お皿のオバサンが言った。
「そうねぇ・・・でも、ぜんぜん人馴れはしてないみたいじゃない?
餌はもらうけど、触られそうになると、サッと逃げるでしょ?
どこかの家で産まれたのなら、こんなに人間を警戒するはずないわよ。
やっぱり、ノラから産まれて、ノラに育てられた子よ。絶対」 川嶋さんが答える。
そうして、あきらめたように続けた。
「とにかく、また秋になったら、この四匹は捕まえて手術しなくっちゃ。
あなたが手なずけてくれれば、みんなかわいいから里親さんが見つかるかもしれないけど・・・」
「そっちの双子はけっこう育っちゃってるから、もうムリかもね」お皿のオバサンが言う。
「でも、こっちのチビたちならまだちいさいし、そのうちなつくかも」
「こんなにかわいい子たち、できれば里親さんにもらわれて、幸せに暮らしてほしいもんだわ。
この冬も、そこの道路で猫が轢かれちゃったでしょ?
あっちのお墓でも、すみっこから干からびた猫の死体がでてきたっていうし。
そんなかわいそうな猫の話、もう聞きたくないもの」
「あたしもここで餌やりはじめて、そろそろ八年だけど、
はじめた頃とはずいぶん顔ぶれが変わっちゃったわよ。
何匹も轢かれたし、あるときからぷっつり来なくなったりした子とかね。
そういう子は、どっかでひっそり死んじゃったのかなぁって思うけど」
「猫は具合が悪くなると、身を隠しちゃうのよ。それでゴハンも食べられずにガリガリに痩せて、
見つかる死体はみ~んな骨と皮みたいになっちゃってて。ほんと、悲惨・・・」
「でも、こうやって、またどっかから子猫や捨て猫が現れて、
結局、餌やりの数はぜんぜん減らないの。むしろ、増えてるかも」
「毎年、毎年、あんなに捕まえて、手術してるのに。まるっきり、イタチごっこだわ!」
「ほんと、キリがないわよね・・・」
ふたりは顔を見あわせて、またまた深いため息をついた。
広場のすみっこで、お腹いっぱいになった子猫たちが四匹、ころころとじゃれ合っている。
りりぃママの双子がタッグを組んで、ヒメ太を追いつめているのだ。おっとりしたヒメッ子は、
みんなのスピードについて行けずに、後ろのほうからチョコチョコと追いすがっていた。
その姿があまりにもかわいくて、ふたりの人間はついつい見入ってしまう。
・・・そして、やっぱり笑顔になる。
「でも、まぁ、だれかが面倒みてやらないと。あたしも、元気とお金がつづくかぎり、
餌やりに来るわよ。餌代もバカにならないんだけどねぇ・・・」
「がんばりましょ。ちいさくても命ですもの。
私たちが見捨てたら、もう、おしまいになっちゃうものね」
そう言ってふたりは立ち上がり、そこいらじゅうに散らかった
お皿やキャットフードの食べ残しを片付けはじめた。
~その72に、つづく~
おはようございます。
今日は、人間さまからながめた
猫たちですね。
by かずあき (2014-03-15 07:54)
いつも公園レストランも大変だなーって思ってます。
by ChatBleu (2014-03-15 09:28)
読みました
by makimaki (2014-03-15 10:40)
こんんばんわ(^^)
のらんさんたちに見守られてヒメの子ねこ
たち元気に成長できるのですね♪
by ちぃ (2014-03-19 20:11)